お詫び小幕 ~やっぱり相手は菊丸で~
・・・爆睡してるにゃー。
いつもの教室に見慣れない影を見つけて、更に近づいて確認して、俺はきょとんと瞳を丸めた。
そこにいたのは -待ち合わせしてたんだから当たり前だけど― 案の定、見慣れた幼馴染だったけれど。
机に丸まって静かな寝息を立てる、という今の姿は、本当滅多にお目にかかることがない。
昔は当然ながら、今も彼女は、人前に無防備な姿をさらす事に慣れないようで。
つまり。
(疲れてんだ)
こないだ国語の授業に出てきた、12月の昔の呼び方は、師走。
普段は尊敬されどっしりと構えている師でさえ奔走しなければならないと表されたこの月は、一体どういうわけか、昔も今も変わらずなにかと忙しくなる。
活動的でマメな、この幼馴染は特に。
(早く帰って休めば良かったのに)
知る限り、彼女が誘いを断る事は極端に少ない。
自分がこうして、目の前で座っていても起きない程度には消耗しているのに。
『部活ないからゲームでもしよー』なんて軽く誘った数時間前を申し訳なく思うと同時、それでもNOと言われなかった事実に嬉しさもこみあげて。
更に言うならば。
『・・・菊丸英二か』
『な!なんで分かったの!?』
『人が近づけばわかる』
『いや今寝てたっしょ!?』
自分の領域に、過去誰も近づけなかった彼女。
その距離が間違いなく縮められたという実感に、たまらない喜びまでこみ上げてきて。
(・・・やば。)
これ以上見てると、またはしゃいで暴走しそうだから。
「もしもし。もしもーし!」
「・・・・ん・・・・・?」
「起きてー。帰ったらふわふわオムライス作ったげるからー」
貰ってばっかの俺だけど、たまにはね?
いつもの感謝の気持ちも込めて、ご奉仕させて頂きます。
おつかれさま!
でもって。
来年もまた、宿題とか写させてくれると
嬉しいにゃあ。
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