いつもの屋上。
なんとなく訪れの遅い、煮え切らない秋を感じながら、それでも確実に月日の経過は感じられる。時間の経過を測るものなんか他にいくらでもある。
例えば、今日のこの日でも。
・・・だってのに。
「お前」
「はい?」
そうする事が絶対的な摂理ででもあるかのように、常に涼やかな面立ちでそこに在るお前。基本的にいつもこの場所に居て、いやたとえ気まぐれに場所を変えたとしてもこいつを纏う空気には一筋の変化もない。
こいつには時間の経過がないんじゃねぇかと、ふと考えた。
だから気付いてないとでも?
「今日は」
「!」
「なんだか賑やかですね。文化祭とか、お祭りの前みたいです」
前じゃねぇ。本番だ、本番。
屋上から悠々と見渡せるテニスコート周りがこんだけ騒がしくて、俺がいま現在どこにいるかで学校中をメス猫どもが駆け回ってて、その感想が『賑やか』だぁ?
どんだけ下界に興味ねぇんだよ。
「・・・おい、お前」
「はい?」
かと言って。
こいつが何をどう思ってるかなんて、いつまでもぐだぐだ考えてるのが“俺様らしい”なんて。
そんな訳もねぇ。
「放課後空けとけ」
「え?―――今日。ですか?」
「ああ」
だ っ て の に 。
「あ、その。ごめんなさい。今日は、ちょっと。 弟と美味しいお店に行くって約束があるんです」
このブラコンはどこまでも空気を読みやがらねぇ!!
マジでこいつ頭がどうかしてんじゃねぇか!俺様がこう言ってんだぞ!?―――脊髄反射で吐き出しそうになるのをぐっと堪える。この俺は跡部景吾だ。そんな見苦しい理不尽な真似して堪るか。
そもそも俺は、何をどう理不尽だって?
いきなり言い出したんだから、年中ヒマ人そうなこいつにたまの予定があったって不思議でもねぇじゃねぇか。
・・・にしたってこいつ、それこそ年中ヒマ人そうな面しておいて。
そうこうしてる内にリミットがくる。
「あ、先輩。そろそろお時間じゃないですか?」
「・・・ああ」
下らねぇ。今日が何だってんだ。
いつも通り授業受けて適当にサボって、テニスに打ち込めば良いだけじゃねぇか。
余計な事考えるからこんなメに
「それでは、先輩」
「ああ」
「いえ、そうじゃなくて」
「アーン―――?」
顔も見ずに生返事を返したところ。いつもとはほんの少し違う、クスと小さく含んだ笑いが聞こえてきた。
つられてふと、そいつを見やると―――視界に入ってきたのは、小さな、けれど確かな包み。
「荷物になってしまうでしょうから、お渡ししようか迷ったのですけど―――どうですか?お邪魔なら私が持って帰り」
聞き終えない内に手が伸びて、さっさと包みを奪った。きょとんと丸く、驚いた瞳が俺を映す。
どこまでもマイペースに考えて動きやがって。そのペースでさっさとしまわれたら堪ったもんじゃねぇ。
ただそれだけなのに、ふわりと、穏やかな笑顔がまた目の前に広がる。
「部活、大変かもしれないですけど、頑張って下さいね」
「はっ。誰にもの言ってんだ」
10月4日。誕生日。
勝負はやっぱり、最後まで分かんねぇもんだ。
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何を今更な感じですが(苦笑)、流石に怒涛の誕生ラッシュを(ちょっとやろうかという気もあったのに!)豪快にスルーしてしまったのが口惜しくて戯れに書いてみました。
誕生日小幕跡部Ver、いつもの空ヒロイン仕様で。 ここぞという時にブラコン化するヒロインと微妙なさじ加減で凹む跡部が好きです。 我ながらなんてサービス性のないツボ!(笑。)
こんなですが、出来たら次はあの人とかその人とか。少しでも楽しんで頂けたらば幸いです。
更新してなくてほんとすんません!(>△<)ゝ
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